こちらでは、複数のパートの音を聞き分け、その音に対して的確な指示が出せるようになる、その仕組みについてお伝えしていきます。4つのパートの音を瞬時に聞き分け、判断し、的確な指示が出せる背景には、きちんとした理由があったのです。
音を聞き分けられる仕組み
4つも5つものパートの音を聞き分け、瞬時に判断し、
合唱団を正しい方向へと導く指示を出す。
仕組みを知らない人から見たら、まるで魔法のようなことを指揮者はやっているのですが、
それにはきちんとしたタネがあったのです。
ここでは、そのタネ明しに加えて、もう一歩踏み込んだところを紹介していきます。
なぜ複数のパートを聞き分けられるのか
それは、楽曲に対する世界観を確立しているからです。
楽曲に対する世界観とは、音楽観ともいう事が出来ます。
楽曲に対する、指揮者個人のイメージです。
そのイメージは、人間のからだ中に走る血管のように、
楽曲全体に張り巡らされていて、しっかりとした世界を作り出しているのです。
で、その世界観があるからこそ、
合唱団から違う世界観を提示されたときに、
その世界観と自分の世界観を比較して、異なる点を指摘できる、と言わけですね。
………
……
…
何を言っとるんだ!?って感じじゃないでしょうか?笑
すみません、わざとカッコつけて書いてみました(笑)
もっとざっくりと説明すると、
指揮者ってのは、1つの曲に対して、しっかりとしたイメージを持っているんですね。
このイメージっていうのは、曲の細かい部分まで行き届いていて、
曲の歌詞に始まり、音符、休符、強弱記号、和音、メロディー、等々
曲のあらゆる情報を網羅したイメージになっているんです。
だから、音符一つとっても、その歌い方にはこだわりがあります。
すると、合唱団から、違う歌い方が提示されたときに、
「それは私の表現と違う!」ってすぐにわかるんですよ。
なんですぐに分かるかっていうと、自分の中に比較対象があるから。
これが、自分の中に比較対象がないと、指示が出せないんですね。
ただ「ま、まぁいいんじゃないですか?」みたいになってしまう。
ですから、指揮者が複数の音を聞き分け、
それを瞬時に判断して、指示を出せる背景には、
自分だけの世界観が確立しているってタネがあったわけです。
具体例で考えよう
さすがにこの説明だけだと、抽象的過ぎるので、
具体例を出して説明してみますね。
例えば、「赤とんぼ」という童謡があります、
この曲の冒頭で考えてみましょう。
歌詞で考える
赤とんぼの曲の冒頭は、こんな感じですね。
「夕焼け小焼けの 赤とんぼ
負われてみたのは いつの日か」
この歌詞に対して、徹底的にイメージを膨らませていくのです。
例えば、この歌詞で歌われている時間帯は、何時ころだと思いますか?
「夕焼け小焼け」と言ってるくらいですから、
16時とか17時かなぁ、と想像するかもしれませんね。
では続いて、この歌詞で歌われている季節は、いつごろだと思いますか?
あるいは、
- 気温は何度くらいだと思いますか? 湿度は?
- 風は吹いていますか? 吹いているとしたら、どのような風でしょうか。
- 夕焼けの日差しは、どのくらい強いでしょうか?
- 「小焼け」とは、なんでしょうか?
- 周りの風景は、どのような感じだ思いますか?
と、このように、
徹底的に想像を膨らませていくのです。
まずは、歌詞だけで考えてみるのが、良いと思います。
それが、ある程度できるようになったら、
今度は、音符なども踏まえて考えてみるのです。
楽譜を見て考える
例えば、
「ゆーうーやーけ、こーやーけーえーの」
と始まるこの曲は、「小焼け」の「け」に向かって、音が上がっていきます。
すると、こんなことが考えられるかもしれません。
- この上昇音型は、何を表現していると思いますか?
- 冒頭に「p」と書いてあるけど、この「p」は、何を表現したかったのか?
とかですね。
このように、楽譜に書いてあること全てに、
「なぜ?」とか、「これで何を表現しようとしたの?」とか
考えていく事によって、自分だけのイメージが出来上がっていきます。
そうしていくうちに、自然と、
「この場面はこういう解釈がしっくりくる。
ってことは、こういう歌い方をしてもらうといいかな。」
なんて考えが出てくるわけですね。
これが、自分独自の音楽観の原点になるわけです。
あなたは、合唱団の声を聴いたときに、
自分の世界観(イメージ)という比較対象を持っています。
「自分の世界観と比較して、合唱団の歌声はどうであったか」
「どうすれば、合唱団の歌声は、自分の理想に近づいていくか」
こんなことを意識しながら、指示していけばいいわけです。
まとめ
複数のパートの音を聞き分け、的確な指示を出す
その為の仕組みについて、お伝えしました。
大切なのは、
自分独自の音楽の世界観を持つこと。
そしてそれは、
- これはなぜ?
- こうすることで、何を表現したかったの?
こういうことを、
歌詞、音型、ハーモニー、リズム、全体の動き、各パートの動き
について、徹底的に考えてくことで作られます。
これって、一見すると、ものすごく大変そうに見えるかもしれません。
ですが、考えているうちに、どんどん楽しくなってくるはずです。
まるで、パズルのピースを探しているような感覚で、
気が付くと何時間も時間がたっている、なんてこともざらにあります。
最初の内は、ちょっと抵抗があるかもしれませんが、
そんなのは最初だけ。
一度コツをつかんでしまえば、あとは素敵な音楽の世界が待っています。
どうぞ、今回の基本原理を使用してみてください。
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