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【質問への回答】合唱曲「行き先」の指揮の振り方のコツ

黒猫さんからいただいた質問へのお返事です。

まずは質問内容を引用します。

合唱コンクールで「行き先」という曲の指揮をするのですが、途中のなめらかなテンポのところでなめらかにしようと意識しすぎて逆に固くなったり、ゆっくりすぎてテンポが遅れたりします……。どうしたら良いでしょうか。

では、以下に私からのお返事を書かせていただきますね。

目次

曲の印象

私は「行き先」という曲を知りませんでしたので、こちらの音源を参考にしました。

快活なテンポや明るいメロディから、歌っていて、あるいは指揮を振っていて楽しそうな楽曲だなと感じました。

一部を除いてピアノは縦目の(拍感を印象付ける)リズムですね。

それに対して、合唱側は基本横目の(言葉やメロディーのフレーズを印象付ける)リズムで、部分部分で縦目のリズムを求められているのかなと感じました。

(↑作曲意図はそうではないかもしれませんが、今の私ならそういう作り方をするだろうなという話です。)

なので、基本的に2分1拍で指揮を振り、楽曲の最後や途中の盛り上がりを見せる部分で、4分1拍の振り方を入れたら、停滞感なく合唱団を引っ張れるんじゃないかなという印象です。

質問の箇所

さて、肝心の質問についてですが、

途中のなめらかなテンポのところでなめらかにしようと意識しすぎて逆に固くなったり、ゆっくりすぎてテンポが遅れたりします

まずこの「途中のなめらかなテンポのところ」を、『雲はゆうゆうと形を変えながら』から始まる部分(先の音源だと00:35の部分)かなと予想しました。

(以下、その予想が合っているという前提で話を進めていきますが、もし違っていたら黒猫さん教えて下さい^^;)

滑らかに歌って欲しいけれど…

なめらかに(レガートに)歌うよう指示すると、ぎこちなくなったり、テンポが遅くなってしまうんですよね。

私も過去に何度も経験したことがあります。

なめらかに歌おうとすると、どうしても前の言葉(文字)と次の言葉(文字)とのつながりが強くなります。

すると、言葉の発音が不自由になったり、テンポ遅れが発生してしまうんですよね。

『雲はゆうゆうと形を変えながら』の部分は、雲が悠々と(=ゆったりと落ち着いた)自由自在に形を変えて流れていくという歌詞ですから、もっさりとではなく、爽やかな音楽作りをしたいですよね。

対処療法

根本的に変えようとしたら、合唱団側の歌唱技術を育てるしかないわけですが、そんなのはただでさえ時間の限られている合唱コンクール練習には無理な話です(笑)

ので、一時的にではあるけれど、

「こういう練習をすると合唱団側に、レガートでいて、かつ音楽が前に前に流れていく感覚を掴んでもらえますよ」

という練習方法をお伝えします。

それは2つあるのですが、1つは「歩きながら歌う」、もう1つは「動きながら歌う」です。

1:歩きながら歌う

これは文字通りの話で、教室の中を歩き回りながら歌ってもらいます。

自由に好き勝手歩いてもらって、そうしながら歌います(ピアノ伴奏はつけた方がよいです)。

こうすると、直立不動で歌っている時と違って、圧倒的に音楽が動きます。

躍動感が出て、もしかしたら最初は各人のテンポのずれが気になるかもしれませんが、そこは例えば、まずはパートリーダー的な人たち+αで試すとかして、事前練習を入れておけば解決できるはずです。

2:動きながら歌う

これも文字通りです。例えばですが、片腕を大きく前に出してもらって(前に倣えレベルで)、歌いながら円や八の字を描いてもらいます。

こうすると、腕の連続的な(=なめらかな)動きにつられて歌声もレガートになり、かつ、腕が動いているので音楽も前に前にと進めやすくなります。

しかも、腕の動きのスピードや描く図形のサイズ感によって、各人がフレーズをどう捉えているかを視覚的に捉えられるというのも、この練習のおもしろいところです。

正直、即効性や効果のインパクトは1つ目の「動きながら」に劣ります。

が、合唱コンクールレベルだと、音取りに不安な子もいるでしょうし、恥ずかしがる子も多いでしょうから、こちらの「動きながら」の方が現実可能性は高いのかなとも書いていて思いました。

指揮者にできること

合唱団側にできる(インスタントな)練習は上記のようなものがあります。

あとは、指揮者の腕の振り方などについても書いておきますね。

基本は2分1拍で振る

黒猫さんが現在どのような指揮を振られているのか分からないので、もしかしたら既に実践されているかもしれませんが…

私なら、この楽曲は基本的に2分1拍で指揮を振るので、同様に振られるのをオススメします。

2分1拍:4分音符2つを1拍とカウントして打点を打つ

4分1拍:4分音符1つを1拍とカウントして打点を打つ(←よくあるやつ)

2分1拍で振ることで、合唱団には、指揮者の腕の動きをゆったりと印象付けられます。

すると、(指揮を見ている子の歌声は)勝手にレガートっぽくなります。

ただ、2分1拍には注意もあって、4分音符の拍感が薄れるため、どうしても音楽がもっさりとしがちです。簡単に言うと、テンポに遅れがちです。

なので、指揮の動きによく加減速をつけ、さらに練習段階では、合唱団を前に前にと煽ってあげることで、↑のような問題を少しずつ解消できます。

歌い手とよく目を見合わせる

これはささやかであるものの、結構なパワーのあるテクニックです。

指揮を振っているとき、練習中に指示を出すとき、合唱団の顔を見てみましょう。

そしてできれば何人かとアイコンタクト的なものをとりましょう。

最初は各パート2~3人いたらいい方だと思います。

クラス合唱と言えども30~40人はいるでしょうから、流石に全員とするのは難しいですが、例えばクラスの半分とか、3/4とかと、演奏中にアイコンタクトが取れるようになったなら、それはもうものすごいことですよ。

合唱団側は黒猫さんの身体から出ている「こういう音楽を作りたい」「こういう表現をしたい」という雰囲気をできるだけくみ取って、それを歌声で表現しようとしてくれますから。

腕をどう振るとか、クレッシェンドをどうかけるとか、そういうことももちろん大事なことではあるんですが、歌い手と上記のようなつながりを持てている指揮者というのは、良い演奏をする印象があります。

もちろん、指揮者として楽曲や指揮の研究はマストですけどね笑

終わり

ということで、黒猫さんからのお返事に、文字で説明できそうなことについては解説してみました。いかがでしたか?

また追加の質問があれば送っていただければお答えしますし、メールアドレス等を添付していただき、練習音源や練習動画を見せていただければ、より詳細なアドバイスもできますので、ご検討ください^^

それでは、いったん失礼します。

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