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【質問への回答】合唱曲「マイバラード」の指揮と歌い方のアドバイス

中学1年生のまりまりさんから『マイバラード』に関する質問メッセージを頂きました。

そちらに対するお返事を書かせていただきます。

で、本当はまりまりさんに直接返信しようとも思いましたが、他の方にも役立つかもと思い、このような記事として公開することにしました。

 

で、始めに書いておきますが、私はこの楽曲を演奏したことがありません。

楽譜も持っていません。

ですので、音源で聞いた感覚と作曲者:松井孝夫さんのインタビューを参考に、以下の内容を書いていることを予めご了承ください(楽譜が手に入りましたら、改めて書き直すかもしれません)。

 

では、合唱曲『マイバラード』について、「私のだったらこうするかも」という指揮と歌い方のアドバイスです。

目次

マイバラードの指揮と歌い方

歌詞をいくつかのパーツに分けて解説していきます。

(前奏)
みんなで歌おう 心を一つにして
悲しいときも 辛いときも

前奏~歌い出しは落ち着いた声量(ボリューム)で演奏します。

男声女声が揃っているユニゾン部分ですから、そんなに頑張って声を出すこともないかと。

 

声を張り上げる必要はないのですが、歌い手全員に「心を一つにして歌う」ということを徹底的に意識させます。

「みんなで歌おう」「心を一つにして」この状況を頭の中で明確にイメージさせ、ときには目をつぶって歌わせたりしながら、ピタッと揃うユニゾンを作ります。

 

そして「悲しいときも辛いときも」の部分。

ここは「悲しい」とか「辛い」とかのニュアンスを一人ひとりが感じながら歌うように指示します。

歌い手一人ひとりが「悲しい気持ち」「辛い気持ち」を心に思い描き、その感覚を持ちつつも、前を向いて「心を一つにして歌う」を意識するのです。

 

こうすることで、この曲の雰囲気を決定的に印象づける「出だし」の雰囲気を作れます。

 

文字にするとなんとも曖昧ですし、どの程度やっていいのかも分かりづらいかと思います。

が、とにかく今はこのイメージを私と共有してみてください。

そうすれば、私が伝えたいことのいくらかは必ずわかってもらえるはずです。

みんなで歌おう 大きな声を出して
恥ずかしがらず 歌おうよ

さて、曲の出だしの「みんなで歌おう」は全声部揃ってのユニゾンでした。

ですが、今回の「みんなで歌おう」はディヴィジョン、つまり声部がわかれます。

軽い表現をすれば、ハマりパートが出てきます。

 

これは「みんなで歌おう」を別の角度から表現したいのかなと感じました。

そして続く歌詞が「大きな声を出して」「恥ずかしがらず歌おうよ」です。

 

こちらも声を張り上げる必要はありません。

ですが、最初のフレーズが「悲しい」などのマイナス感情があったのに対し、2回目のフレーズは前向きな印象を受けますから、

イメージとしては「目の前の友人に『一緒に歌おうぜ』と手を差し伸べる」ような感覚で演奏します。

 

で、最後の「歌おうよ」というフレーズの終りの部分、ここにクレッシェンドがある、のかな?

私の聞いた演奏では、次のフレーズ「心燃える歌が」に続くように徐々に強くなっていたのですが。

 

「歌おうよ」→「心燃える歌が」の部分は、上記のクレッシェンドの記載があれば楽譜通りに演奏しましょう。

そうでなかった場合、あからさまな声量アップは避けるとしても、

「歌おうよ」から「心燃える歌が」に向けて、だんだん気持ちが熱くなっていくような、そんなテンションの盛り上げりを体感しながら演奏させるように私は作っていきます。

心燃える歌が

で、こちらが質問のフレーズですね。

質問には

”歌詞の最初の方よりも「こころ燃える~」の方をfだから大きく振りなさいとは言われたけど具体的にどんな感じで振ればいいですか?”

とありました。

 

もちろん、曲の出だしに比べれば「心燃える」のフレーズの方が強い歌い方になりますが、それは突然音量が大きくなるというよりも、

先の「歌おうよ」からのテンションの盛り上がりを受けて強い歌い方になる、という感覚のほうが強いかなと。

 

ただ音量をでかくするというわけではないんです。

むしろ音量はそんなに出ない(出せない)んじゃないかなとすら思います(音が低いから)。

 

大事なのは、強い意志を持って歌ってもらうこと。

「心燃える」を実感できていれば、自然とそのフレーズにあった声が出てきます。

ですので、まぁよっぽど声が小さければ別ですが、声量よりもその音に含まれる雰囲気やエネルギーみたいなものに着もしたほうが、聞いている人には伝わります。

 

といいつつも、一応演奏上のテクニック?的なものを書いておきます。

 

「歌おうよ」の「よ」で4拍音を伸ばしますよね。

私はその4拍が肝心だと考えていて、

1~2拍目は、まだ曲の前半部分の(レガート的な)横の流れを感じ、

3~4拍目で「心燃える」の縦の感覚にシフトしていく、そのときに演奏も強めていく。

 

私であればこのような具合に作っていきます。

………これ、伝わっていますか?汗

 

まぁとりあえず先に行きますね。

歌がきっと君の元へ

「心燃える歌が」で緊張感が高まっていきますね。

 

で、「歌が」の「が」の音で緊張感を維持して、それを次の「歌が」につなげます。

ここ、すごくサラッと書いているんですが、とても大切な部分です。

 

「ターターター(こころ)ターターター(もえる)ターターター(うたが)…タタタ(うたが)

上記の「ターターター」で溜めた緊張感を「…」の部分でも維持し、それを「タタタ」につなげるんです。

 

そして「歌が」が受け継いだテンションを「きっと」「きみの」「もとへ」にバトンタッチしていく。

そのときにやや縦に刻んだリズムを、再び横の流れに戻します。

きらめけ世界中に 僕の歌を乗せて
きらめけ世界中に 届け愛のメッセージ

そして最後の部分、作曲者がかなり強調したかったであろう部分です。

この楽曲の中で最も充実させたい部分です。

 

これまで歌ってきた「歌」が広い世界できらめきを持つのです。

ただ、気をつけたいのは広い世界だからといって、大味にドバーっと歌い散らすわけではありません。

 

「きらめけ世界中に」「僕の歌を載せて

「きらめけ世界中に」「届け愛のメッセージ

とあるように、世界に発信された歌は必ず誰かに届くんです

そしてそれは「愛の」メッセージだというのです。

 

つまり、「愛」という温かい要素と「人に届く」声質を持っているわけですから、やはりフレーズの終わりには丁寧さが求められてくるのかなと感じます。

 

「キラメケーセカイジュウニー トドケーアイノメッセージー」のような、声量任せに文字を羅列したような歌い方では、この曲の良さが伝わらない(伝わりにくい)、ということを言いたいのです。

 

さて、1番で調子に乗って説明をしすぎました。

2番は簡単に。

みんなで語ろう 心を和ませて
楽しいときも 嬉しいときも

みんなで語ろう 素直に心開いて
どんな小さな 悩み事も

心痛む思い たとえ君を苦しめても

仲間がここにいるよ いつもキミを見てる
ぼくらは助け合って いきていこういつまでも

メッセージがよりストレートになっていると感じます。

歌詞からなんとなく状況が想像しやすいですよね。

 

2番は基本的にレガート(横の流れ)を意識した演奏が良いと思います。

 

で、「心痛む思い」の部分。

ここを1番と同じように歌うと雰囲気が???になるので、縦の動きを意識しつつも、横の動きメインで指揮を振るとよいかなと。

縦の動き:横の動き=3:7

くらいの感覚。

1番だと、

縦の動き:横の動き=4:6

とか。

あくまでイメージですけど。

 

で、終りの部分。

心燃える歌が 歌がきっと君の元へ

きらめけ世界中に 僕の歌を載せて
きらめけ世界中に 届け愛のメッセージ

届け愛のメッセージ

1番の終わりと同じ歌詞ができてます。

ここでぜひ頭を使っていただきたいのですが、

作曲者はなぜ同じ歌詞・同じフレーズを持ってきたのでしょうか?

また、

その同じ歌詞をどのように歌ってほしいのでしょうか?

 

答えは色々考えられます。

正解はありません(あ、あるとしたら作曲者自身か)。

 

ぜひ、自身でよく考えてみてください。

10分やそこらで分かるようなものではないですから、じっくり楽譜や歌詞、合唱団と向き合って考えてください。

 

そうすれば、きっとこの曲を締めるに値する、あなたたちだけの演奏が完成するはずです。

最後に

お疲れさまでした。そして、最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

本当は指揮の振り方とか歌い方とかテクニックとかを細かくお伝えしたいのです。

その気持は山々なんですが、、、文章では伝わらないんですね。

 

ですから、指揮を振る上で一番重要なこと、歌い方を考える上で一番重要なことを、言葉でお伝えさせていただきました

 

記事中でも繰り返し書いていますが、大切なのは、

とにかく歌い手の頭の中、心の中に統一された思いを作ること

 

指揮や歌い方の指導というのは、上記を達成するための手段に過ぎないんですね。

かっこよく腕を振ることが指揮者の仕事、というわけではないのです。

 

大切なのは、その音楽を通じて何を伝えたいか。

それは、あなた自身が何を伝えたいかでもありますし、

作曲者が何を伝えたいかでも、歌い手が何を伝えたいかでもあります。

 

その根幹部分を抑えていただきたく、今回このような記事を作成しました。

 

まりまりさん含め、この記事を読んだ方の参考になれば幸いです。

 

最後にまりまりさんからの質問全文を載せておきます。

私は中学1年生で今年の合唱コンクールでマイバラードの指揮をすることになりました。私は吹奏楽部でその顧問が担任の先生です。教えてもらう時間もあまり無くていつも先生がやっている指揮をなんとなくで真似しています。でもあまり自信がありません。歌詞の最初の方よりも「こころ燃える~」の方をfだから大きく振りなさいとは言われたけど具体的にどんな感じで振ればいいですか?ちなみに4拍子です。あと今の時期マスクをしないといけなくて表情が分かりにくいです。他の表現方法があれば教えてください。

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